日本全国さまざまな場所で絵画販売の展示会を開催してきた。
企画内容は、契約している作家を中心とした日韓米の油彩・東洋画・版画。価格は数万~数百万。作品にはそれぞれ独特な個性がある。
絵画の販売現場に立って対面でゲストに接してみると、実に様々な人間がいることに気づかされる。彼らはそれぞれに悩みを抱えていたりするのだが、絵に惹かれるときにそうした負の部分が作用することもある。
コレクターと言わないまでも芸術作品としての絵画を何点か買ってきた経験のある人たちは、自分なりの絵の見方や感じ方がある。ゆえに、気に入りさえすればあまり説明せずとも購入に当たっての躊躇は少ない。ところが、初めて購入する人は「この絵にこれだけのお金を出していいのだろうか」という迷いが大きい。
そうした人には、作品を解説するとともにご本人の内面を絵につなげてあげることで、絵画からより深いよろこびを感じ取り納得して購入される。
その時、いきおいゲストの事情や内的心情に深く入り込むことになる。
●絵によって良くなった
ゲストの中には病気や様々な家庭の問題を抱えている人がいる。そんな人が絵画によって癒されているのを見ることがある。購入後に時間が経ってからそうした証言を聞くこともよくある。
・うつ病患者が絵で癒され就職が決まった
・精神病院の薬を飲んでも治らなかった幻聴が消えた
・長年子供が出来なかった人が懐妊した
・夫婦仲がよくなった
・不登校の子供が学校に行くようになった
・夜寝付けなかったのにぐっすり寝れるようになった
・自殺をおもいとどまる
・お金が回るようになった
などなど
中には嗚咽するほど涙を流して絵の前に立っている人もいた。
●良くなるメカニズム
アメリカでは、数十年前から、絵画を精神的な病気の治療に使っている。カナダのフランコフォニー医師会では、2016年からモントリオール美術館と提携して、処方箋で美術館入場券を出している。精神疾患だけでなく高血圧、糖尿病、慢性的な体の痛みの緩和など。
彼らの研究によると、美術品によって病気が治癒されてゆく中心的メカニズムは、美術鑑賞がドーパミンなどの「脳内ホルモンの分泌を促す」ことにあるらしい。
こうした科学的根拠をそれぞれの人に当てはめてピンポイントで解明するには、それこそ研究機関に委ねるしかない。
しかし「この薬を飲めば必ずよくなる」などとは医者も言うことができない。薬が効かないことは往々にしてある。美術鑑賞による治癒も同様だ。薬も美術鑑賞も病気の治癒に対する効果があるとしても万能ではない。
また、絵画によって現実がよく変化したという人の場合、脳内ホルモンの分泌以上に「潜在意識」に対して絵画が作用しているのではないかと私は思っている。
人間には何か超常的な力に頼ろうとする気持ちがある。鬼瓦などの「魔除け」、神棚を祭るなどはその良い例である。それは何かの宗教に対する信仰心からくるものというより、もっと原初的な衝動だ。美術品にそれを求めても不思議はない。
もし美術品にそうした効用があるとしたら、気学(風水)などのエネルギー的な作用も考えられるが、多くの場合「絵画がもたらす心の安心」が現実に作用しているのではないだろうか。
絵画展の会場では、最初から病気の治癒などの問題解決を願って絵を観たりしない。しかも購入を決意するのは、理屈ではなく、ゲストがその絵を気に入り、あるいは心身に癒しを感じたりするからだ。
中には何か良くないことが転換すればよいといった「ご利益」を願って絵を購入しようとする人もいる。そう表明して絵を買おうとする人に対して、私は「絵を買えば必ず良くなるわけではない」と断っておくようにしている。
ゲストの事情を聞いて、その人が惹かれている絵を観てみると「なるほど」と思うことがある。例えば夫婦仲のことで悩んでいる婦人が、二羽の鳥が仲良さそうに寄り添っている絵に魅入られていた。
この絵が家に飾られたときに、その婦人や家族の潜在意識に影響をもたらすことは想像に難くない。「潜在意識が現実につながる」ことは量子物理学を根拠として世の中の成功法に応用されている。つまりその絵画がゲストの夫婦仲をよくする可能性があるしそうなると信じたい。
ゲストの事情を聞かされたなら、絵を売る方であるこちらも「絵を飾ることでその人が良くなって欲しい」という気持ちになる。
とは言っても、もともと絵を買う動機は「作品の芸術性からもたらされるよろこび」を手に入れたいところにある。それに対してお金を出すのだ。たとえば有名作家だからといったことや将来の値上がりを期待してといったこと以上に重要なのはそのよろこびだ。
●科学と霊界
立花隆が膨大な資料を読破し、世界の科学者や臨死体験者へのインタビューを通して著述した「臨死体験」(1991~94年)を読むと、そこには様々な証言がある。立花隆はもともと霊界の存在に対して否定的な視点で研究に取り組んだ。その彼が研究結果として出した結論は、死後の世界は「科学的に証明できていない」しかし「否定することも出来ない」ということだ。
絵画を購入した人たちが体験していることに不思議なことはいくつもある。
「絵を観ていると自分に語りかけてくる声が聞こえた」
「亡くなった夫が自動書記でメッセージをくれた」
ホントかよ!と言いたくなるような話もいくつかある。私の見解としては、当人の潜在意識にあるものが声として聞こえてきたという見方をしている。決して霊的なもとのして片付けようとは思わない。
しかしながら、唯物論者のようにハナから霊的なものを否定はしているわけではない。私は自分が死んだあと無になるなどとは思っていない。人間は肉体的な存在であるのみならず魂を有する霊的な存在でもあると信じている。死後も魂は滅びない。
ゆえに、絵画によって病気が治癒したり現実が好転した背後には、医学的・心理学的根拠のほかに、こうした霊的な要素も絡まっている可能性はあるだろう。
死という未知との遭遇はいつかやってくる。ただし、その時までできるだけ生を楽しみたい。芸術の楽しみは精神性や霊性を高めてくれるなら生きている限りそれを楽しんでいきたいと思う。
「肉体と精神と魂」の関係については、量子論などの進んだ科学によって、将来、解明され証明されていくことに期待している。
さて、このブログ「あっと不思議なアートのお話」。どんな書き方をしたらよいかは思案中だ。
読者はこのブログを読むにあたってここにあげた内容を踏まえていただければ幸いである。
■カナダ・モントリオール美術館内部
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